詩魔法の仕組み †
形状変化する仕組み(シェルノトロンのみ) †
ジェノメトリクス内に存在する「マテリアルパレット」というものを使う。
シェルノトロンの場合、ジェノメトリクスでマテリアルパレットを展開すると、フォログラフに自分の現在の現実世界での身体(変身前はダミー形状)が表示される。
その形状を変えていく。
形状を変化させる方法は、その宿主によって全然違う。
大抵は宿主が「最も効果的な変形方法だと思う方法」によってエディットできる。
彫刻家であれば彫る事によって、画家なら筆で絵を描くように、粘土細工のように、動物を育てるように、ゲームをプレイするように。
チェインの仕組み †
チェインとは、他の人間と導力を共有することである。
平たく言えば、導力を間借りできるため、自分の限界以上の力を持つ詩魔法を発動する事が出来る。
この「チェインによる詩魔法増幅」に欠かせないものが1つある。
それは、チェインする相手が、今から詠唱する詩魔法とその行為に同意していることだ。
これはとても重要で、相手には明示的に「謳うこと」と「その詩の想い」を伝え、共感してもらわなければならないのだ。
例え潜在的に肯定的であったとしても、その詩のことを知らなければ導力の共有は出来ない。ニュートラルはNGなのである。
さて、このチェインは、単に導力増幅が出来るだけではない。
もう1つのメリットとして「クオリアの拡大」がある。
平たく言えば、「他人の目や耳を使うことが出来る」のである。
100km離れた場所の状況が、あたかも今そこにいるかのように分かる。
これが複数人集まると強烈な恩恵をもたらす。視野が超的に拡大するのである。
人間は通常、目線位置にもよるが、だいたい頑張っても数百m程度しか視野がない。音もその程度しか聞こえない。
だが、例えば5人が世界中に散らばっていると、その数千キロといったオーダーの範囲を自分の目のような感覚で見ることが出来る。
もちろん、そういった用途の詩魔法を紡いだ場合に限るが。
この「クオリアの拡大」は、人間以外の存在とも行うことが出来る。
チェインは「想いの共有」であるから、想い(導体H波)を持つ存在なら、その感覚を共有できる。
それは例えば惑星、恒星、そして星団なども全て共有可能という事になる。
それによって得られるものは、超宇宙的な視野である。
天文は第六紀末期において、この超的な知覚について発見し、解明した。
チェインの具体的手法 †
ジェノム同士のチェインの場合は、ジェノムが好き勝手繋がりまくるため、宿主はそれを意識することはない。
だが、シェルノトロン同士でチェインする場合、そのシェルノトロン同士で同じプログラムが走るように、同一ネットワーク内に置かなければならない。
ペアリングの方法は以下の通りである。
- シェルノサージュ管(シェルノトロンの核)を同一回路内に差し込む。
- 真空管の持ち主(=導力供給源)に、これから詠唱する詩魔法についてコンセンサスを取る。
- まずペアリングコードを詠唱する。同一回路内にあり、かつ宿主が承諾したシェルノサージュ管のみ、ペアリングモード成功の光を放つ。
- 詩魔法を謳う。この時、ペアリングモードが成功している宿主から導力=生命力をもらうことが出来る。
尚、契約していない(宿主のいない)シェルノサージュ管は同一回路内にあっても力を発揮できない。
(宿主がいないシェルノサージュ管は、電池の繋がっていないトランジスタと同じ。増幅しようにも元のエネルギーが無いのだから)
シェルノトロンとジェノムが初期登録するには、ジェノム同士の交流を擬似的に行う手法をとる。
それはすなわち、ジェノムにシェルノトロンのアドレスまで行ってコンタクトを取ってもらう事に他ならない。
ジェノムからすれば、それはジェノム同士の交流と同じであるが為に、何も難しい事はない。
ただジェノムにとって、コミュニケーションや種の繁栄に全く役立たないこの訪問が面白いわけはない。
だから、ジェノムは例えば宿主に協力したいとか、ジェノム自身もその詩魔法に積極的でない限り、無闇にシェルノトロンとのペアリングは行わない。
さて、ペアリングを行うためには、シェルノトロンが自らのアドレス(住所)を公開しなければならない。
シェルノトロンがジェノムに住所を公開するのには、以下の手順で行うことになる。
- シェルノトロンと同調した状態で、ジェノムに手をかざす(触れる)
- ペアリングコードを詠唱する。シェルノトロンがペアリングモードの光を放つ。
- ジェノムがアドレスを認知する
- 詩魔法を謳う。この時、ペアリングモードが成功している宿主から導力=生命力をもらうことが出来る。