帝国民の生活 †
身のまわりや家の中の生活用品などの特徴です。
食事文化 †
寧ろ、建物や家電の低水準さに比べて、食文化の豊かさは半端無い。
どんなに貧しい家であっても、餓死する事は滅多にないのである(何を食べられるかは置いておいて)。
帝国において育てられている植物や食肉、海鮮は全て遺伝子操作を行っている。
これは当たり前すぎる事となっており、食用に遺伝子操作をしていない野生の肉や野菜を食べる事は、寧ろ危険であるという文化なのだ。
(実際、アースにおいても豚は寄生虫を持っているし、鳥もウイルス持ちである。これらはラシェーラにおいて解決されている)
食事文化が豊かな理由の最も特徴的なのは、いわゆる「家庭菜園」が当たり前になっている事である。
これはどれ程都心の過密地帯であっても、そして一人暮らしで働いていなくても、家庭菜園はある。
感覚的に、家庭菜園は我々でいうところの炊飯レベルであり、菜園の無い家は「さすがに堕落しすぎ」と思われる。
帝国の統計には、毎年コロンごとの「食糧自給率」が発表されるが、この「自給率」とは当然「自宅」の意味である。
コロンによるが、少ない場所でも50%程度、多いところでは90%にもなる。食料を買いに行く事が殆ど無いという事だ。
更に「食糧売却率」という指標もあり、これは30~70%程度になる(家によりばらつきがある)。
これは何かというと、家庭菜園の食物は、お店や市場で普通に買い取ってもらえるのである。
例えば下町の一般的な家庭だと、朝起きて菜園の作物を収穫し、それを買い物カゴに入れて街に出る。
まずは食糧を行きつけの商店に売却し(ちゃんと売却得意先が世帯毎にある)、そのお金で家で賄えない食糧を買う。
大抵の場合、植物を売り、魚介や肉を買う。
お金という文化がある中でも、お金の流通を使わない取引(実際は媒介するが)が有る為、貨幣価値の暴落などが起こっても最低限の生活は維持できる。
さて、その家庭菜園だが、当然だが地球での家庭菜園とは全く違う。
基本屋内育成である。外は放射線が強すぎるのと、頻繁に起こるガンマバーストに当たると一気に枯れてしまう為である。
帝国の家々では、一戸建てなら最上階、マンションなら窓際の一室は食糧室と言われる部屋になっている。
(分譲マンションなどでは「2LDFK(F=FoodRoom)」などの表記になる)
ただ、食糧室は必ず独立した部屋になっており、そこでは生活しない。夜寝ると窒息死する為である(代謝の早い植物が目一杯有る為、夜間二酸化炭素濃度は酷く上がる)。
殆どの家庭育成用の種は、僅かな光で莫大な光合成をするようになっている。すなわち代謝が早く、育ちが良い。
大抵の場合水と養分(養水)だけで育つので、1日1回洗濯機を回すくらいの感覚で、当たり前のように育つ。
もう少し趣味が入っている人は、もう少しテクニックが必要なものを育てる。
例えば、放射線量が高いほど甘く美味しくなるかぼちゃや、マイナス温度でないと枯れてしまう樹氷野菜などである。
更には、食用動物を飼育する人も珍しくはない。ここまでいくと完全に趣味だが、地域に一人「食用動物家」がいると、その人は大抵人気者である。
(通常食肉は企業の大規模工場で作られる為、味が均一で人によっては物足りないのである)
その育成植物の種類は多彩で、普通の野菜から、穀物、発酵パン、ソースの実(ココナツのような実の中がデミソースで一杯になるような植物)などなど。
近年では肉のような食感とジューシーさを持つ根菜が開発され大ブームである。油は多いが、植物性油脂の為ヘルシーだからである。
そんな帝国民は殆ど家でご飯を食べるのだろうと思われがちだが、実は外食が多い。
帝国民は騒ぐのもお酒も好きだからだ。
また面倒くさがりなので、汚れる料理はしたがらない。必然的に焼鳥屋や焼き魚屋は大繁盛である。
近所の人達と呑みに出掛けるのは当たり前であり、町内会のバーベキューなども盛んに行われる。
地域が活性化している場所では、当たり前のように育てる植物も相談の上分担する。
コミュニティ(地域生活) †
コミュニティはかなり活性化している。
それはこの惑星の過酷な環境が創り出した本能レベルの気質とも言える。
自らの家という管理区域はあれど、見ず知らずの人であっても迎え入れる事は多い。
これは、ガンマバーストなどの「どうにもならない災害」が多発する星であるが故である。
それに伴い、隣近所の相互扶助はかなり活性化している。
実際、例えば一時的にどこかの世帯主が職を失ったとしても焦る事はない。
隣近所から食糧を分けてもらえるし、就職先の斡旋を手伝ってもらえる。
また、子供の教育にも良い環境と言える。両親共に用事があるときなどは、隣近所で面倒をみるのが当たり前の文化だからである。
ジェノメトリクス同調調停院の教え †
原理 †
<不完全原罪>
『人は生まれながらにして原罪を持ち、故に不完全な身体を持つ』
この世界の宗教観では、生まれついた人は全員「犯罪人」である。
そしてその罪により、人間は12本のDNA鎖のうち、2本を除いて全てを神に剥奪された。
科学が発達して尚、この宗教観は更なる立証に向かっている。
なぜなら、この惑星の環境に対し、ラシェーラ人は完全適応していないという結論に達している為である。
通常、惑星で進化する生命はその惑星の環境をノーマルとし、最も快適な住処とするはずである。
すなわち、赤色巨星で放射線量が多いラシェーラでは、人々は赤方変移に対応して赤~緑程度の色彩感覚を持ち、
放射線は現在の線量で通常生活を営める筈なのだ。
だが、実際は違う。
神によってDNA鎖を取り除かれ、ラシェーラという「地獄」で罪を償うべく宿命を背負っているのだ。
そしてその没収されたもう半分の自分、それがジェノムである。
ジェノムとの同調は宗教的にも大変意味があり、意義深いものである。
自分と相性の良いジェノムを探す事は、『自らを探す』という宗教的意義と一致する。
故に、ジェノム探しの旅は、宗教的にも人生の目玉として存在し、故に会社や学校ですら、それを容認する。
(ジェノム休暇などがある)
そして、より遺伝子のDNA鎖が多いほど、更に同調の度合が多いほど、「完全体」に近づけるのである。
現在、完全体に最も近いのが皇帝である。
皇帝は政治的にだけではなく、宗教的にも教皇的な位置に存在するのである。
尚、この教えは、いわずもがなジェノムの王「コーザル」が教え広めたものである。
ジェノム達は、この星を侵略してきた現人類に対して、この教えを流布することで、侵略者達を皮肉っているものと思われる。
地文のシェルノトロンに対する見解 †
地文はシェルノトロンを認めていない。
シェルノトロンは人工的な力によってDNA鎖を増やすツールであり、それは「神の設定した成長の過程を覆すもの」である為だ。
それに対し、シェルノトロン開発元である天文は「この世界に存在する以上は、自然の摂理に反していない」と主張する。
人工的に創られたシェルノトロンが、自然ジェノムと同じ「完全体」に近づけるという結果をもたらす事自体が、神が容認している事の裏付けであるというわけである。
地文「シェルノトロンは悪魔の罠であり、このままでは、この世界はより低レベルな世界(地獄の下)まで落ちる」と言う。
神にはその思想に反する存在がいるわけだが、人工的なジェノムは、神のフリをした悪魔による戦略であるというのである。
否定派は、ジェノムを探す旅が無意味となった現代において、過去よりも精神的に退廃した事を、数々の事件を元に訴える。
神はジェノムを手に入れる旅を通じ精神を鍛え、ジェノムと交流する事で愛を育む、というプログラムを作ったというのである。
現時点でもこれら2派は争っており、恐らく永久に和解することは無いだろう。