シェルノトロン

シェルノトロンとは

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シェルノトロンとは人工的に作られたジェノムのことである。
シェルノトロンは、その心臓部である「シェルノサージュ管」と、実効果を生み出す「クレイドル」によって構成されている。
シェルノサージュ管は殆どの場合、我々の住む惑星アースでいうところの「真空管」のような形をしており、中には鈍く光るフィラメントのような極板が存在する。
そこに宿っている光は、宇宙から抽出されたエネルギーTz波である。
(真空管型以外にも、レコード盤のようなシェルノトロンも存在する。これらの長所短所は後述

シェルノトロンは、Tzエネルギーによる回路処理により、擬似的にジェノムと同等かそれ以上の機能を持つ。
具体的には「同調」「完全同調」が可能であり、それも拒絶されることもない。
ジェノムと違い生身ではない為、コンディションによる力のブレも無い。
更に、ジェノムは人間をえり好みするのに対し、シェルノトロンは人間の発声帯域に合わせてくれる。
結論としてシェルノトロンとは、ジェノムのいいとこ取りをした「人工ジェノム」と言える。

シェルノトロンは生身ジェノムと比べて、色々な面において便利である。
具体的な説明は後に回して、まずはどのような点が違うのかを以下の表にまとめてみた。

▼生身ジェノムとシェルノトロンとの対比▼
項目生身ジェノムシェルノトロン(第2世代)アルノサージュ管(第3世代)
形状固有形状固定初期は真空管(ダミー形状)であり可変初期は真空管(ダミー形状)であり可変
宿る生命ジェノムREON-4213(レオン=ネロ)プレイヤー
パワーソース宿主の生命力宿主の生命力外宇宙のエネルギー
DNA鎖形状デオキシリボ核酸管内プレート&メッシュコズミックプレート(枚数可変)
DNA鎖数固定工作により可変プログラムにより可変
取得厳しい修行と求愛が必要シェルノトロン側が自分の能力(声帯)に合わさるアルノサージュ管側が自分の能力(声帯)に合わさる
可能な同調同調、完全同調、一心同体、唯我同調、完全同調のみ同調、完全同調、一心同体、唯我
シェルノトロン図解
ジェノマイズ端末.jpg

シェルノトロンの変遷

シェルノトロンは、その名前で呼ばれる前までに、2回のバージョンアップが行われている。
そもそもこの発明の大元は、ジェノムとテクノロジの融合、というところが発端である。その目的で作られたのが「G2管」である。
G2管は、ジェノムの力を外部の機械によって増幅し、エネルギーを高めるというだけの、ジェノムの増幅器でしかなかった。
そこから一歩進んで、ジェノム抜きでジェノムと同じ事が出来るようにしたのが「G2-DH管」である。
これは商用としても販売されることになり、商用端末第一弾として「G2トロン」という名前で市場に出回っている。

その後更に進化をして、ほぼジェノムと同等の機能を得られるようになったのが「シェルノトロン」である。
シェルノトロンは、天文が開発したシェルノサージュ管を搭載し、プログラムではなく、考え行動する仮想生命体「REON-4213(レオン)」を搭載している点が特徴。
これにより、ジェノムと同じように、誰でも簡単に、そして自由に詩魔法を使えるようになる。
更にレオンは、ジェノムと違って拒絶もしないし乗っ取られることもなく、キャパシティはレオンが合わせてくれる。

そして次世代端末と言われているのが「アルノサージュ管」である。
これは、外の宇宙からエネルギーを持ってくるため、Tz波を使うことが無く、エネルギーも実質無限である。
ジェノムは外宇宙の生命が、外宇宙から操作する事が出来るため、時空の歪みを極めて少なく保つことが出来る。

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シェルノトロンの力の源

シェルノトロンには、「REON-4213(レオン)」と呼ばれる仮想生命体が宿っている。
ジェノムと違い仮想生命体であるレオンは、プログラムによる対話で活動する。
その稼働エネルギーはTz波であるが、それは天文の供給するTZライン(Tz波伝送路…いわゆる電線)によって供給される。
シェルノトロンはそのTz波を動力源として稼働する。だがこの波動は無線で送ることが出来ない。
結果として、シェルノトロンはいわゆるコンセントに繋ぐか、電池に充電したTz波を使う他無い。
シェルノトロンの唯一にして最大の弱点はこの「ワイヤード(有線)である」もしくは「蓄波が必要である」ことである。

シェルノトロンの本体は、「シェルノサージュ管(真空管形状のもの)」と「クレイドル(DHメモリ)」に分けられる。
それこそ、電球とそのソケットと思ってくれて構わない。
それぞれには役割がある。
真空管形状のシェルノサージュ管は「SHW励振増幅器」、すなわち生命エネルギーブースターである。
そしてクレイドルはDHメモリであり「想い」が入っている場所…簡単に言えば、詩魔法プログラムが入っている場所である。
クレイドルに入っている想いはとても小さい。それを莫大なエネルギーであるSHW(生命エネルギー)によって増幅し、詩魔法にするのである。
また、クレイドルにはTz波を蓄波する機能を持っているものが殆どで、それによってシェルノトロンを携帯できる。
ただ、蓄波には限りがあるため、長時間詠唱や、複雑な想いの詩魔法(=複雑な効果の詩魔法)は難しい。
また、増幅力の高いシェルノトロン(巨大な真空管)も、蓄波では不可能である。
その場合、ワイヤードのクレイドルとなる。

ちなみに第6紀末期において、この「クレイドル」は多種多様に販売されており、庶民はこの「クレイドル」によって自分色を出す。
惑星アースでいうところの、携帯電話選びと同じだと思えば良い。

シェルノトロンの範囲はどこまで?

ジェノムはわかりやすい。猫なら、猫がジェノムの範囲である。
シェルノトロンはどうか。当然「真空管」と「クレイドル」がシェルノトロンの範囲となる。
わかりやすく言えば、我々の使っている「蛍光灯スタンド」は、コンセントプラグまでの機器全てを総称して「蛍光灯スタンド」と言うように、
「シェルノトロン」も、前述の「クレイドル」も込みでシェルノトロンである。

では、ワイヤードのクレイドルの場合はどこまでが範囲になるのか?
それは、「想いの影響単位」までである。

DHメモリと想いの影響単位

DHメモリは、特殊な「記憶の外部装置」のようなものである。そこに自分の想いを封じ込めておける。
それはすなわち、「詩魔法をストック出来る」という事に他ならない。
故にシェルノトロンユーザーは、自分のクレイドルを大切にする。自分が作った詩魔法の全てがそこに入っているからである。

ところで、シェルノトロン(真空管部分)はクレイドルから取り外せるので、クレイドルを沢山持っていれば、詩魔法セットの使い分けが出来る。
それならば、他人のクレイドルにある他人の詩魔法も、自分のシェルノトロンを挿せば使えるのか、と言えばNOである。
当然、SHW(生命エネルギー)の波紋が違うため、そこから詩魔法は紡ぎ出せない。
逆に、シェルノトロン(真空管部分)同士は繋がることが出来る。そして皆の力をもらい、一人では為し得ないくらいの増幅力を得ることは可能だ。
これに関しては、下記「シェルノトロン流の「チェイン」」を参照のこと。

シェルノトロンとのファーストハーモニクス

ジェノムと心を通わすためには、ファーストハーモニクスという初期同調があった。ジェノムと人間との「ご挨拶」だ。
シェルノトロンの場合、この「ご挨拶」はどうするのか。
実はここだけは、ちょっと面倒くさい。とはいえ、ジェノムからYESをもらう旅に出ることを考えれば、大した労力ではないが…。
シェルノトロンは、天文という組織で「登録(サインアップ)」手続きを行う。
その際に、自分の身体の一部分…髪の毛で良いのだが、それを天文の手続き係員に渡す。自動車免許交付時の顔写真のようなものだ。
天文ではその登録者のDNA配列を記録し、同じく持参した(お店で買った)シェルノサージュ管(真空管)と紐付けする。

大した手間ではないが、長期的に見れば、やや面倒な面がある。
なぜなら、例えばシェルノトロンを買い換えたとき、新たに増やすとき、壊れたときなどなど、何かあったら必ず天文へ出向かねばならない為だ。
だが最近は、天文は帝都中にサテライト窓口を開設し、だいぶサービスは良くなった。

シェルノトロンのプログラミング~生命を宿す方法

シェルノトロンが爆発的人気を博したのは、シェルノトロンを買って天文への登録手続きを済ませれば、すぐさま詩魔法が使えてしまう所にある。
これは、そのシェルノトロンに最初から幾つかの詩魔法が入っているという事である。
そういったプリセット型のシェルノトロンは、お手頃価格で様々な種類が販売されている。日常用から戦闘用まで様々だ。
だが上級者になると、それらの家電的なシェルノトロンは好まない。彼らが好むのは、プログラマブル・シェルノトロンだ。

多少値段は張り、知識も要するが、プログラマブルシェルノトロンは、熟練すれば自身の思いのままの詩魔法を創ることが出来る。
その方法は、やはりジェノムとほぼ同じである。
すなわち、ジェノメトリクス(=精神世界)の中で、何かを組み立てたりすることによって創り出す。
シェルノトロンと繋がった状態で眠ることで、ジェノメトリクスに降り立つことが出来る。
そこには、シェルノトロンの形状を変化させる「マテリアルパレット」と、シェルノトロンの威力を調整する「アストラルパレット」というシステムが存在する。
それらを駆使し、自分だけのオリジナル魔法を組むことが可能なのである。

マテリアルパレット

マテリアルパレットは、シェルノトロン、アルノサージュ管に搭載されているシステム(ソフトウェア)である。
このシステムを使うことで、シェルノトロンの形状を自由に変えることが出来る。
シェルノトロンは初期状態(真空管の形)のことを「ダミー形状」と言う。
これを実際に、詩魔法を使う為に特化した形にすることを、実在化という。
シェルノトロンはこの「実在化」をしてはじめて、魂が吹き込まれて何らかの力を行使できる存在になるのである。

実在化には、ジェノメトリクス内に存在する「マテリアルパレット」というものを使う。
マテリアルパレットを展開すると、フォログラムに自分の現在の現実世界での身体(変身前はダミー形状)が表示される。
その形状を変えていく。
形状を変化させる方法は、その宿主によって全然違う。
大抵は宿主が「最も効果的な変形方法だと思う方法」によってエディットできる。
彫刻家であれば彫る事によって、画家なら筆で絵を描くように、粘土細工のように、動物を育てるように、ゲームをプレイするように。

アストラルパレット(アルノサージュ管のみ)

アストラルパレットは、アルノサージュ管にのみ搭載されているシステム(ソフトウェア)である。
アストラルパレットの概念は、マテリアルパレットほど分かりやすくない。
それでも、ものすごく分かりやすく言えば「DNA鎖数の増減を行う」パレット、という事になる。
生身ジェノムの場合DNA鎖数はそのジェノム個体によって固定、第一世代シェルノトロンでは工作によりプレートを増やすことで可能だったが、
アルノサージュ管ではソフトウェア(=精神的操作)のみで、ある程度の範囲で可変である。
このパレットは、それを行うものである。

ただ、普通に考えれば鎖数は多いほど良いわけだから、わざわざ減らしたりする必要は無いと思うだろう。
だが鎖数が多くなると、精神的負荷とTz波消費が膨大になり、バッテリー切れのみならず、最悪自分自身が気絶、昏睡という事もあるのだ。
故に、アストラルパレットで「自分の身の丈にあった詩魔法」をエディットする必要がある。

そして、ここで能力が問われるのが、「如何に少ないDNA鎖数で、大きな力を出す回路(プログラム)を組めるか」である。
そう、アストラルパレットとは、このようにDNA鎖数と出力との駆け引きをしながら、その中での最高効率を目指す最適化を行うシステムなのである。
組み方は違えども、第一世代シェルノトロンも鎖数と出力の駆け引きに関しては同じ。

パレットの役割まとめ

項目マテリアルパレットアストラルパレット(アルノサージュ管のみ)
役割形状変化、詩魔法の発動DNA鎖数の調整、エネルギー回路の作成

txBIOS(ティーエックス・バイオス)

シェルノトロンにはジェノムにはないサービスも存在する。
txBIOSは、仮想生命体「REON(レオン)」が管理する、シェルノトロン利用者への天文の公共サービス。
シェルノトロンのスペック(DNA鎖数)によって利用できるランクが決まっており、天文のインフラを使うことが出来る。
現実で言えば、例えば家庭用PCから東大のスパコンに演算させたり、野辺山電波望遠鏡のデータを取得したり出来るようなものである。
これらのサービスを使うことで、シェルノトロンが行える詩魔法のバリエーションが飛躍的に拡大する。
通常、シェルノトロンを使って詩魔法を紡ぐときは、基本自分の知識や経験からしか紡ぐことが出来ない。
だから、一人で64BitCPUを設計する事が無理なように、専門技術を必要とする高度な詩魔法は紡げない。
だが、txBIOSを利用することで、それが可能となる。
もちろん、利用には免許とお金と免許レベルに対応する鎖数のシェルノトロンが必要である。

シェルノトロン流の「チェイン」

本来チェインとは、ジェノム同士が交流する際にその副産物として得られる恩恵だが、シェルノトロンではご丁寧にこのチェインまでエミュレートされている。

シェルノトロン同士のチェイン

シェルノトロン同士のチェインは、物理的に同一ネットワーク内に複数のシェルノサージュ管(=シェルノトロンの核)を差し込むだけである。
これによって、その回路内で稼働するシェルノサージュ管は全て、宿主から導力(=生命力)を消費し、それらは加算されて1つの詩魔法を発動する。
ただしジェノム同様、宿主の同意がなければ当然導力の供給は行われないため、そのシェルノサージュ管は同一回路内にあっても稼働しない。
だから例えば、悪意を持って他の多数のシェルノサージュ管と接続し、それらを利用した持ち主達との同意を得ない増幅行為(シェルノサージュ管を使ったテロ行為)は原理的に不可能である。
シェルノトロンであろうとも、想いの共有は絶対不可欠なのだ。

ジェノムとのチェイン

この「チェイン」エミュレートは、シェルノトロン同士だけでなく、ジェノムとも可能なように出来ている。
ただ、ジェノム同士の交流とは違うため、シェルノトロンとジェノムでチェインしたい場合、得てしてジェノムに頼み込まなければならない場合が多い。
もちろん、ジェノム側がシェルノトロンに頼む場合は、そのジェノムが相当なシェルノトロン嫌いでない限りは、シェルノトロンの持ち主が快諾するだけでよい。

これらの具体的な仕組みは、「チェインの仕組み?」を参照して下さい。

シェルノトロンの種類

第6紀に主流であるシェルノトロンは「真空管型」である。
このシェルノトロンの長所は「即効性」と「簡便さ」、そして「柔軟性(=DNA鎖をDIYで簡単に増やせる)」である。
逆に短所は、Tz波切れが発生すると、その後レジュームが出来ないことである。

真空管型以外でお目にかかるシェルノトロンと言えば、レコード型(物理記憶型)というものが存在する。
レコード型は、ほぼ全てに於いて真空管型より性能が劣る。だが1点だけ真空管型を凌駕する長所がある。
それは、Tz波切れが発生してもレジューム可能であるという事だ。

例えば、真空管型とレコード型のシェルノトロンで戦ったとしよう。
両者共に途中でTz波切れになった場合、その後再起動した際に、真空管型は再度発動処理から行わなければならない。
ところがレコード型の場合、Tz波切れが起こった直後から再開できる。
極端な話をすれば、家で延々紡いで増幅させた詩魔法を、戦闘開始直後に発動させることすら可能である。

それでも通常の人が真空管型を選ぶのは、レコード型のコストパフォーマンスの悪さだ。
レコード型は高価な上に、寿命が極端に短い。
ディスクに物理的に情報を彫っていく為、彫る場所が無くなったら終了である。
発動中にじりじりと寿命が減っていくのは両者とも同じだが、その時間には1000倍の開きがある。
(レコード型は46分で終了するが、真空管型は30000分程度の寿命を持つ)
この「発動中」というのは、当然ジェノメトリクスでのエディット時間も含め…である。
特殊な用途でもない限り、真空管型の方が良いに決まっている。

シェルノトロンの功罪

シェルノトロンはジェノムのフリをして遺伝子結合をする、人工的に生成された塩基対デバイスである。
それは情報分野で例えればウイルス型のスパイウェアのようなもので、
化学分野で説明すれば、人体に対するヒ素のような、リンの代わりに化学結合をしてしまうようなものである。
シェルノトロンと結合すると、ラシェーラ人は「人工遺伝子」を体内に持つ「人工高螺旋生物」となる。

それは、ハッカーが被検体の遺伝子に直接LANケーブルを接続して操作できる状態であり、そのハッカーによっては薬にもなり毒にもなる。
シェルノトロンのプログラムは、ジェノムの性質をよくシミュレートしており、エディットで仮想ジェノムを生成する。
そして神経的、化学的に「人工遺伝子」を操作し、ジェノムのそれと同じ結果をもたらす。
こんな特異な性質を持っているのはラシェーラ人だけ。そしてこれは強烈なセキュリティホールである。

更にアルノサージュ管(次世代シェルノトロン)に至っては、この世界(宇宙)全体の秩序を乱す危険性のある、未知数の媒体である。
その問題が引き金となり、地文天文を壊滅に追いやる決意をする事になる。
地文にとって、この世界の保存則は絶対であり、外界との接続はこの世界壊滅の脅威としてしかうつらないのである。

シェルノトロンの形状変化

シェルノトロンの形状はジェノムと違い、その形状がジェノムとしての特性を表さない。
例えば、ドラゴンの生身ジェノムは、完全同調をしたり詩魔法を使う場合、その「ドラゴン」としての個性が色濃く出るが、
シェルノトロンの形状が真空管だからといって、詩魔法などに「真空管」としての個性は出ない。
これはシェルノトロンが様々な形状を持てる事の裏付けでもあり、デフォルトの真空管形状のことは「ダミー形状」と言われている。
ダミー形状は、シェルノトロンジェノムが全く力を発揮していない状態、停止している状態、そしてオフライン(魂が宿る前)の状態において取り得る形状である。
故にオンライン状態では、「シェルノトロンの中の人」が宿主と対話してエディットした形状に変化する。
この段階で初めて、生身のジェノムと同等の機能を持つようになる。
この形状変化だが、ジェノムとの同調状態にかかわらず形状の維持が可能である。

だがここで1つ、重要な事がある。
それは、「シェルノトロンの大きさの大小を問わず、変化する体積と必要なエネルギー量は比例する」という事だ。
シェルノトロンは、ダミー形状時においても様々な大きさが存在するが、大きなシェルノトロンだからといって、必ずしも大きな変化が起こしやすい訳ではない。
大きくても小さくても、1立方センチメートルを変化させる為に必要なエネルギー量は同じなのだ。
ということは、大きなシェルノトロンほど、完全に形状を変える為には莫大なエネルギーが必要になる。
そんな理由もあり、第六紀ではシェルノトロンのサイズは最大でも8立方メートル程度(立方体で1辺が2mに相当)に設計されていた。
それでもベテランや専門職向けであり、一般人は、50立方センチメートル以下(通常の真空管サイズ)が平均的な大きさであった。
そうしないと、形状変化すらままならない為だ。
そもそも大きなシェルノトロンはそれだけ波動を多く必要とするため、ソケットでは波動量が全く足りない。

シェルノトロンに、より大きな変化をさせるには、より効率よく潜在的なエネルギーを供給することである。
その為、遺伝子螺旋の鎖数(=管内のプレートの枚数)は大いに影響する。
シェルノトロンの場合生身ジェノムとは違い、リンクするDNA鎖数は、シェルノトロンを改良する事により可変である。
とはいえ最初から12鎖にして稼働できるわけではない(というか、12鎖直結など理論上の話であり、実際は不可能に近い)。
デフォルトはやはり3鎖(自分の2鎖をプラスして全体で5鎖)であり、そこから先は、シェルノトロンのプログラミング次第という事になる。

次世代シェルノトロンである「アルノサージュ管」

アルノサージュ管は、第六紀終焉の段階で、完成品は1つしかない。
このレアなシェルノトロンは、第六紀末期に開発されつつも完成に至らなかった、唯一にして最強の「次世代シェルノトロン」である。
それまでのシェルノトロンと決定的に違うのは、以下の点である。

  1. 外宇宙とコンタクトを取ることで、無尽蔵にエネルギーを取得可能

ただし、最初から大変化を起こせるわけではない。
あくまで「無尽蔵にエネルギーを取得可能」なだけで、「一気に」ではない為である。
それは水道と水の関係に似ている。バケツ一杯の水ではプールを水で満たす事は出来ないが、水道の蛇口が有れば可能だ。
だが、それには途方もない時間がかかる。その時間を短縮するには、水道の口径を広げ、圧力をアップさせる必要がある。
第一世代のシェルノトロン(第六紀に全盛を極めたシェルノトロン)は「バケツ一杯の水」に例えられる。
そして次世代シェルノトロンは「水道の蛇口」である。
この蛇口の口径や水圧は、外宇宙の住人次第で変化するのである。

おまけ:テレビの想い?

この世界ではシェルノサージュ管という特別な真空管によって、超常的な能力を得ることが出来るが、それと同じ形状をした通常の真空管も現役である。
これらはいわばCPU的な役割で存在しており、シェルノサージュ管とは形は同じだが機能は全然違う。
なので、例えばシェルノサージュ管を真空管テレビの真空管と交換して挿すことが出来る。
その場合どうなるのか……?
答えは、殆どの場合、何も起こらない。
だが、実は人間には分からないくらい微弱な想いが、その同調主に伝わっているのである。
それは、テレビの想い出を同調者が見ているのである。

例えば「テレビ」にはテレビの想いがある。それはテレビを作った人の想いであったり、テレビを使った人も想いであったりである。
テレビの想いは、ワイヤーで繋がっている電気ポットやラジオとは違う想いである。だから、そこは別世界になる。
もちろん、テレビもラジオも同じ会社が作っていれば、同じ想いを持つ場合もある。その辺りは01ではなく、アナログである。
すなわち、テレビとラジオは、100SHmag(想いの単位)では別物だが、10SHmagでは同じであり、
1.0x10のマイナス10乗SHmagくらいになると、世界中の人間が作った物は同じ想いになる。
ただ、そこまで小さな想いは増幅しても殆ど誤差の範囲内に収まってしまい、普通の人間はおろか、シェルノサージュ管すらも反応する事が出来ない。
とにかく、通常の「もの」であっても微弱な想い(DHW)が溜まっているのである。

世の中にはこれを商いにしている人がいる。いわゆる「探偵」と「検察」である。
これらの人々は、特殊な、もの凄く増幅率の高いシェルノサージュ管を持っており、この「物に染みこんでいる微かな想い」を訓練によって感じ取る事が出来る。
そして、事件現場にある真空管を搭載した物を介して、事件の真相を暴く。
だが、見えるときもあるし見えないときもある。
強い想いが発せられる可能性の高い凶悪犯罪などでは、見える率が高いと言われている。


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